MS-09D ドム熱帯仕様型
(DOM TROPICAL TYPE)
プロトタイプを経て量産に移されたドムは、その驚異的な機動力を活かして目覚しい戦果を挙げた。しかしアフリカ戦線のような厳しい環境下では高温による機体のトラブルが多発し、前線から多くの改善要求が提出されていた。そこでキャリフォルニアベースでは熱帯戦仕様のテスト機が造られ、その結果を踏まえて量産機に取り付けるオプションパーツが開発されることになった。このパーツを装着したドムがMS-09D、熱帯仕様型ドムとして区別されるMSである。
このオプションパーツは主に機体の放熱効果を高めるものであり、現地でも簡単な作業で装着可能なように設計されていた。これを装備した機体が熱帯仕様のドム、MS-09Dである。ノーマルとの違いは頭部に露出した伝導チューブ、頭頂部にかかる放熱パイプと近距離用通信アンテナ、そして背部と脛裏部に露出させた推進機である。頭部を囲む伝導チューブはプロトタイプから量産機へと移行する時点で内蔵されていたが、この熱帯仕様では再び露出する形に差し戻されている。
オプションパーツはキャリフォルニアで量産されており、その後アフリカに送られて現地改修の形で既に稼動しているドムに取り付けられた。しかし実際にこの改修を受けた機体は10数機程度であり、パーツ自体の生産数に比べるとかなりの差が見られる。これについてはこのパーツ群は思った以上の効果を挙げておらず、むしろ予定外のトラブルを引き起こしていたから、とされている。
パーツの取り付けは現地で行える程度の簡単なものとされていたが、実際には予想以上に手間のかかるものであった。激戦区のアフリカ戦線ではMSの稼働率も高く、ましてや新鋭のドムを一旦後方に下げてまで改修する余裕はなかったのである。またパーツ自体も現地では思ったほどの効果を挙げられず、わざわざ改修するコストを考えると必ずしも有効とは言えないものであった。
パーツ群の効果が今一つであった理由はいくつか考えられる。元々試作機であるYMS-09をベースに開発されたものであり、量産機との相性が良くなかったこと。テストが行われたのがキャリフォルニアであり、実際に使用するアフリカではなかったことなどである。更に推進機を機外に露出させたため、砂漠地帯で使用すると機内に異物が入り込みやすかったという指摘もある。結局このオプションパーツ群はさしたる成果を挙げないままとなり、更なる熱帯仕様ドムの改良が進められることとなった。
使用された機体は少ないものの、MS-09Dは戦後の写真集などでもしばしば見かけることができる。多くはオプションパーツのテスト機となったYMS-09Dとして紹介されているが、そのほとんどが実はこのMS-09Dである。試作機の方は実戦には一切参加しておらず、戦闘中の写真は全てパーツを装備した量産機のものと考えてよい。MS-09Dの使用例として有名なのは、カラカル小隊のロイ・グリンウッド少佐機であろう。アフリカ戦線で活躍した同小隊はMS-06Dを使用したことでも知られている。少佐の09Dは「サンダーキャット」と呼ばれ、四つ葉のクローバーの部隊マークとともに多くの写真集に登場している。
MS-09Dの武装は量産機であるMS-09に準じ、360mmジャイアントバズーカにヒートサーベル、近接戦闘用拡散ビーム砲であるが、機体によってはザクやグフ用の装備を使用することもあった。
MS-09D ドム熱帯仕様
全 高 | ? m | 自重量 | ? t | 総出力 | ? kw | 地上速度 | 90(240)km/h |
頭頂高 | ? m | 総重量 | ? t | 総推力 | ? t |
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