YMS-09 プロトタイプドム
(PROTOTYPE DOM)
開戦当初における地球侵攻作戦において、在来兵器を一掃したザクを中心とするジオンMS群であったが、地球の重力下における機動力の低下は戦略・戦術の両面でネックとなる深刻な問題であった。MS-07グフシリーズが地上用MSの主力となりつつあった頃にはこの問題に対するいくつかの解決案が試され、それなりの成果を挙げていた。
まずグフシリーズではザクにはなかった両脚部の推進機によってMS単体の機動力が向上していた。また長距離の移動にはギャロップやザクタンカーといったホバーで高速移動する揚陸艇がMSを1〜数機輸送可能であったし、巨人機ガウ攻撃空母はMS3機の空中輸送も可能としていた。同じ空中輸送の手段として要爆撃機ド・ダイYSはMS1機を機体上部に載せたまま飛行可能で、後にサブ・フライト・システム(S.F.S.)と呼ばれたこの運用は、連邦軍が模倣して同様の支援兵器を開発したほど有効なものであった。
しかしそれでも宇宙空間の機動に比べると、地上でのMSは馬鹿でかい鈍重な兵器に過ぎず、その攻撃力と防御力だけで強引に戦場を勝ち抜いていったのが現実であった。ジオン軍内部でもこの問題に関しては、ジオニック社を中心に様々な改良を進めていたが、意外な方向から画期的なアイデアが持ち上がった。ツィマッド社である。ツィマッドではMS-07Hの開発において廃案となったホバーボート一体型MSの発想を一歩前進させ、飛行ではなく浮上による高速移動を実現させようとしていた。
元々ツィマッド社はサイド3の航空機メーカーで、ド・ダイYSなどの開発に実績があった。MS開発ではゴッグを始めとする水陸両用MSを手がけており、ド・ダイYSの成功から地上用MSの開発にも進出するようになっていた。それまでのMSが脚部に装備していた推進機はあくまで背部の主推進機の補助的なものに過ぎなかったが、ツィマッド社のプランは脚部に装備した熱核ジェットエンジンでホバー浮上し、背部のスラスターで推進力を得るというもので、これはMSの常識を打ち破る単体での高速移動を可能にするものであった。
このプランは元々、MSの単体飛行プロジェクトの際提出されたものであり、この時点ではホバーボート一体型MSのようなものが考えられていた。結局これは退けられ、熱核ジェットエンジンの膨大な推力によるジャンプ飛行が計画されている。このプランはMS-07Hとして実行に移されるが、その結果は明らかな失敗であった。その後ホバーボート一体型プランは研究が重ねられ、両脚部にそれぞれ1基ずつホバージェットを搭載するプランが最も現実的なものとして提唱されたのである。
これには軍兵器開発局も興味を示し、MS-07C-3をツィマッド社の開発チームに譲渡した。MS開発のノウハウが少ないツィマッド社のスタッフはこれを徹底的に分析・改造し、データ収集用の機体としてMS-07C-5を完成させた。しかし機体は完全な新設計で開発されることが決定しており、このC-5ではヒートサーベルなど武装のテストが行われたに過ぎない。その後予定通り、新設計による試作1、2号機がジオン本国で作られ、直ちに地球に降ろされて各種テストが行われた。
同機は地上用MSの欠点を克服した画期的なMSとして大きな期待がかけられており、テストには宣伝用フィルムのために多くの将官が招かれている。中でもフレデリック・クランベリー大佐は自ら1号機に搭乗して実用試験を行っており、当時の期待の高さがうかがえよう。機体色は黒を基調としており、ザクとは違う新設計機であることが強調されている。また部隊マーク風のペイントが施されているが、いずれもダミーであり、式典に華を添えるためのザビ家の意向であったとされている。テストはこうしたものものしい中で進められたが、性能そのものに問題はなく直ちに採用が決定、数週間後正式にMS-09として量産が開始された。
試作機であるYMS-09と量産機のMS-09に違いは基本的になく、単に外装の整理を行ったに過ぎない。大きな特徴は頭部の周囲を囲む動力パイプであり、量産機ではこれを内蔵している。背部ランドセルの形状も大きく異なり、ヒートサーベルを水平にセットしており、機体右側にバズーカの専用ラッチ、左側にPT-1型通信ユニットを設置している。また脛裏部の推進機も機体外に露出していた。これらは全て量産機では内蔵式とされている。
主武装は新型の360mmロケット砲で、その破壊力からジャイアントバズーカと呼ばれた。接近戦用にはこれまた新開発のヒートサーベルが用意されている。YMS-07Bが試験的に装備したものよりも高温・高効率で、ビームサーベルが実用化されるまで最強の武装であった。なお、量産機が装備している近接戦闘用拡散ビーム砲はまだ取り付けられていない。
YMS-09 プロトタイプドム
全 高 | ? m | 自重量 | ? t | 総出力 | ? kw | 地上速度 | 90(240)km/h |
頭頂高 | ? m | 総重量 | ? t | 総推力 | ? t |
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