店内立ち話(3)2000.8.9 「8月9日、今、見る戦争の映画は」
「今、見る映画がない」 戦争は虚しい
今時分になると戦争や原爆に関するイベントや放送番組などが目白押しです。、さて日本映画でこの時期に見るにふさわしい、人間の愚かさ、戦争の虚しさを考えるのに良い映画はと思うと、はて、思いうかばないのです。チャレンジした映画はあるのですが良い映画というにはいまヒトツ。

まず「戦争と青春」1991年今井正監督作品ですが、この映画は高校生の工藤夕貴さんが夏休みの課題で東京大空襲を調べることでお話が進んで行きます。お父さんの井川比佐志さん、叔母さんの奈良岡朋子さん(若い頃は工藤夕貴二役)、先生の樹木希林さんの若くてキレイなこと。他の出演者も皆さん演技にリキがはいっていて、映画はある事件を通して描いていますのでそれは感動的に終わります。が、はて戦争は?東京大空襲は、いきなり飛んできて、一回だけだったの?。焼夷弾て聞くけど何?。
市井の人々の生活が理不尽に壊されることは昔の日本、木造家屋が多かった時代の台風の被害、関東大震災や最近の神戸の大地震でも描けること。戦争は背景としてあるだけでは戦争の映画とはいえないのでは。
(※1944.11.24サイパン島を飛び立ったB29爆撃機が東京を空襲。以後、終戦までに東京への空襲は110回を超える)

「黒い雨」は1989年今村昌平監督、井伏鱒ニ原作の8月6日ヒロシマ原爆投下前後を描いた映画ですが、主演の田中好子さん他のみなさん演技にリキがはいっています。(こういう映画はどの映画でもみなさん演技にリキが入りますがやはり反戦へのメッセージという気持ちが出るのでしょうか。)この映画は原爆の映画ですから、一瞬にして主人公たちが苛酷な状況となり、いかにして死んでいくか、生きて行くかが描かれています。
核爆弾の恐ろしさは描けていると思いますが戦争そのものの恐ろしさはどうでしょうか。そして、それはセリフで言わずに(小説ではないのですから)映画で描いて欲しいと思います。とはいえ上記2本はおすすめしておきます。

「TOMORROW 明日」という1988年黒木和雄監督の8月9日長崎原爆投下の前日の人々の暮らしを描き、それが一瞬でなにもかも終わるという映画がありますが、8月9日に何が起こるかが映画を見ている側にはわかっていても、カレンダーを見せて人々の生活をただ見せるだけでは緊張感もわきません。

この映画のいけないとこは戦争が見えてこないところ。このころ戦争真っ只中、どころでなく、もはや日本はその終末をむかえんとしている時期。じつはアメリカでも日本にこの時期すでに戦意はなく降伏は時間の問題と読んでいたという。日本で戦争をおこなっていたのは誰なんだ。広島や長崎で死んだ人は単にまきぞえなのか。もしかしたら死んだり後遺症で苦しんだりしなくても良かったのか。映画で描くことはたくさんあるでしょうに、ただピカッと光って終わりでは駄作と言われてもしょうがないでしょう。

「ひめゆりの塔」は1995年神山征二郎監督の映画ですが沖縄戦の苛酷な状況が描かれています。沢口靖子、後藤久美子、中江有里ら少女達が直接傷ついて行くような痛ましい映画です。
しかしこの映画もこの時期の日本の状況があまり描かれていません。なんらかの形で、たとえば従軍した恋人や兄弟の前線での様子、あるいは中央の政治的な状況を挿入するとかして説明がないと、(特に若い方には)この現実に起こった物語の不条理な痛ましさが、ただ死んだり傷ついたりすることの痛ましさで終わってしまうのでは?。この話しを映画にするならなにより戦争の悪辣さ、戦争は誰もが不幸になるのだということをテーマに作ってもらいたいと思うのです。

他に、別のアプローチで戦時の青春を描いた「ウインズ・オブ・ゴッド」「君を忘れない」などがあります。「ウインズ・・」のなかで出撃前の兵士が、お母さんが空襲で亡くなったと連絡を受けるシーンが有り「君を・・」のなかにも兵士が婚約者から来た手紙を読むとその情景が写しだされますが、日本中が戦争をしていると感じさせる大事なシーンです。映画の中身についてはノーコメント。

またその他にも「人間の条件」「海と毒薬」といった作品もありますが戦争そのものより別の問題をテーマにしていると思えますので紹介は別の機会にいたします。ただ映画は両方とも内容は重いですが、しっかりした作品ですからご覧になることはおすすめします。

そして戦争映画ではないのですが、おとなの人に(必ずしも年齢のことではない)見ていただきたい映画を2本。まず「ニ十四の瞳」1954年監督:木下恵介、出演:高峰秀子、夏川静江。若い小学校の女教師と12人の教え子たちの物語。貧しい村の生徒たちは太平洋戦争を経て、様々の人生をたどり、大人となって再会する。反戦へのメッセージも十分あります。
私はこの映画を十数年前に初めて見ました。それは1982年制作、ジョージ・ロイ・ヒルの「ガープの世界」よりも後で見たことで、この映画の作風にとても感銘をうけたものでした。「木下恵介は泣かせ過ぎるから、映画館では見られねぇ」と言う人も、ビデオだったら大丈夫。お部屋を閉めきって、タオルを用意して、あんしんして見てください。

もう1本は、イギリスのアニメ作品、1987年制作「風が吹くとき」です。内容は、ロンドン郊外の田園地帯で、のどかな年金生活を送る老夫婦ジムとヒルダ。ある日突然、ラジオから「国際情勢悪化」のニュース。2人は政府発行の「核戦争に生き残るための手引書」に従い、屋内に核シェルターをつくる。一瞬のせん光のあと美しい田園は荒れ果てる。二人はやがて放射能におかされ衰弱していく。救援の手がくると信じながら……。(ビデオ・パッケージ・コピー抜粋)
原爆のアニメでは「はだしのゲン」「はだしのゲン2」が有名ですが、大人の方には「風が吹くとき」をすすめます。アニメでは他に「火垂るの墓」があって反戦のメッセージも十分あります。

<店長がススメル 戦争(ヲカンガエル)映画>

戦争そのものの酷さ虚しさを描いた映画
「プライベート・ライアン」「太陽の帝国」「トコリの橋」「フルメタル・ジャケット」

戦争での人間の愚かさを告発
ロバート・オルドリッチの「攻撃」キューブリックの「突撃」「戦場に架ける橋」「アンツィオ大作戦」チャップリンの「独裁者」「シャドウメーカー」「ナイトブレーカー」「大反撃」「戦争のはらわた」
ちょっと消極的だけど「レマゲン鉄橋」「遠すぎた橋」

戦争の中の人間性を描く
「眼下の敵」「最前線物語」「プラトゥーン」「西部戦線異状なし」「戦艦シュペー号の最後」

戦争と人間のかかわり、または翻弄される人を描く
「シンドラーのリスト」「ディア・ハンター」「ジャック・ナイフ」「カジュアリティーズ・オブ・ウォー」「天と地」「グッド・モーニング・ベトナム」「キリング・フィールド」「僕の村は戦場だった」「地上より永遠に」「シャドウメーカー」「ナイトブレーカー」「禁じられた遊び」「地下水道/灰とダイヤモンド」「アンネの日記」「戦争の小さな天使たち」「愛と哀しみの旅路」「シベールの日曜日」「愛の嵐」「ダンケルク」「アンボンで何が裁かれたか」(ビデオにはなっていませんがNHK・TV「わたしは貝になりたい」もチャンスがあったら要チェック)

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