私たちは自分たちに重要なことを決める際、話し合いをして決めます。中学生や高校生でも、部活のミーティングや、文化祭で出し物を何にするかなど、クラスで話し合って決めることがたくさんあります。そうした話し合いは本当に効果的に行われているでしょうか?普段、なにげなく行っている「話し合い」について振り返り、本当に効果的な話し合いとはどういうものかについて考えます。特に「何かをみんなで決定する」という目的をもった話し合いを中心にとりあげます。
2002年度、この授業があった日はたまたま9月11日。そう、去年アメリカ合衆国で同時多発テロがあった日です。そこで、同時多発テロに関する話題を授業のマクラとして話しました。
余談になりますが、この同時多発テロという"事件"をひとつとってみても、じつに様々な心理学の分野を引き出す事ができます。災害や事故直後の人々の行動―パニックや助け合い行動、非難行動、情報の伝達など―、災害後人々のPTSD、報道のされ方やそれを受け取る側の反応・印象形成、イスラム教徒への迫害、民族間の憎悪・偏見の形成、異質な存在への寛容性などなど・・・・
今回は「話し合いを考える」というテーマなので、まず、「今米国がビンラディンを殺すために、空爆を行っているが、こうした報復行動に賛成するか、しないか」ということを生徒一人一人順番に聞いてみました。座席の順番に聞いていったのですが、最初に答えた生徒が「反対」と答え、その以下全員が「反対」と答えました。途中2人がかなり悩んだのち、「反対」と答えました。ただ今回は質問の内容の影響も大きかったと思います。
全員聞き終えてから「聞いておいてなんですが、空爆が正しいか、間違っているかということは、ここでは関係ありません。で、今みなさんが答えてくれた答えは本当に自分の意見でしょうか?もしかしたら、前の人がこう答えたから、みんながこう答えたからということで、そう言ってしまったということはないでしょうか。どうでしょう?一人きりの部屋で一人で考えたら、ちがった意見だったかもしれません。一人で考えているときと、自分以外の人がそばにいて意見を聞いたり、聞かれていたりするときには、ちがった答えを出すことがあります。」と、ここで「みんながAという意見の中で、Bという意見を出すのは難しい」というアッシュの実験を紹介しました。
次にテロ直後の米議会でブッシュ大統領にテロ報復のあらゆる軍事行動を認める決議が行われた際、上下両院でただ1人反対票を投じたバーバラ・リー下院議員の話題をとりあげました。これは9月11日のテロの3日後にアメリカ連邦議会で行われた決議でのことですが、上院では全員が「賛成」、下院では「賛成」が420名、「反対」が1名でした。反対の投票をしたただ一人の議員がバーバラ・リー議員です。ブッシュ大統領がテロ報復をするのが正しいかどうかは、ここでは問題にしませんが、私が興味を引かれたのは、420対1で意見を表明するということは、並大抵のことではないと思うからです。しかもテロの3日後ということで、アメリカの世論もヒートアップしている中で、こういう「ちょっと、まった」をかけるのは、どれほどのプレッシャーだったろうと想像します。
この例が当てはまるかどうかはわかりませんが、「一人で結論をだすより、複数人で結論を出すほうが、よりリスクの高いほうに偏りがちになる」という現象―リスキーシフト―について説明をしました。
以上、大勢で話し合いをすることは、1人で結論を出すよりも正しいことが多いが、話し合いが正しく機能しない場合もあるというを知ってもらい、本当に効果的な話し合いとは?ということについて考えることを目的に授業を行いました。
この「話し合いを考える」の単元は3部構成になっています。
まず、観察学習として、映画『12人の怒れる男』を見ます。
つぎに日本人なら、どんな話し合いをしそうかについて考えるために映画『12人の優しい日本人』を見ます。
そして最後に実際に自分たちで話し合いをやってみます。ここでは、「NASAゲーム」を用いました。
@映画『12人の怒れる男』を見る
A映画『12人の優しい日本人』を見る
BNASAゲーム