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ビールの友019
演目「大人の玩具」
1997.02.14

 毎度ばかばかしいお笑いを。

 なんてぇもうしますかねぇ、世の中にはいろんなご趣味を持った御仁がおありになりますな。女の方を囲ったりなんかしてるお方もおりますようで、端から見ればこれはうらやましい限りでございますが、当人にいわせますとはなはだ面倒なものだそうでございますな。
 なにしろ優しくすればつけあがる、小言をいえばふくれるし、なぐりゃあ泣くわで、殺しゃあ化けてでるってなもので。なかなか大変でございます。

 かと思いますと、やたらと高価なものを買うのが道楽の方もいらっしゃいます。骨董・絵画なんてぇものもありますが、先日話題になったのはアイルトン・セナのF1カーを1,500万で購入して、それを自分の会社に飾っていた方ですな。この方は自分のお金で買ったワケじゃなかったらしいですが。なんでもオレンジのどーのと人の金を集めて買ったらしいですな。

「オレなんかポルシェの最新型買ったばっでさぁ」なんてご自慢の方がいらっしゃいます。聞けばお値段の方は1,000万を超しているそうで。

 かたや「車なんて目じゃないよ。オレなんかセスナだもん」

 飛行機とはまた豪勢ですな。ところが、これも小型機なら1,000万円くらいで買えるそうですな。同じ小型機でもビジネスジェットなんてことになりますと一桁上がっちゃうらしいんですけども。

 上を見ればきりがないというのが船でございます。クルーザーでさえものによっては億になっちゃうらしいですからなァ。

 乗り物に凝ってしまう方というのは、好きな話になっちゃうテェとみなさんどうも子供ンようになってお話になります。お話だけならいいんですが、スキが高じてこうした高価なものを買っちゃうン。いい大人になってから凝りはじめたものが危ないそうで、どんどんエスカレートしていっちゃう。子供が新しい玩具をほしがるのとおんなじことで、大人なだけにゼニを持っているからかえって始末が悪い。ええ、大変なご道楽でございます。車、船、飛行機ときまして乗り物は出尽くしたかと思っておりましたら、まだあったんですな。大物が。

「買っちゃったんだよ、とうとう、オレさぁ」
「おう、トメ公じゃねぇか。買ったって、なにを買ったんだ」
「聞いて驚くなよ」
「早く言えよ」
「新幹線だ!」
「なにィ?」
「新幹線だよ、新幹線。しかも『のぞみ』だよ、これが」
「へっ! 新幹線たって、どうせ玩具だろ? 持ってるよォ、オレも、HOゲージ」
「バァカいっちゃいけないよ。ほ・ん・も・の。モノホンだぁね。ちゃぁんとJR東海から払い下げてもらったんだから。電源車も食堂車も買ったね。全部で3両。家ィうっぱらって、今じゃ新幹線住まいよ。」

 それからがマァ大変。なにしろ同じ好きもの同士ですから、チキショー、そんならオレもってンで、よせばいいのにさっそく田畑を売り払って熊公も新幹線を買いました。

「やいやいやいやい。このあいだはよくも威張り倒してくれたな。今日からはでかい面ぁさせねぇぞ」
「お、今日はやけに威勢がいいな」
「オレのはすごいぞ。計画だけで終わったけど、ちゃんと試作してたんだねぇ。やるねぇ、JRも」
「じらすんじゃぁねぇよ。なに買ったんだ」
「新幹線だよ。幻の北海道新幹線! 寒冷地仕様で、カタログスペックから行けばシベリアだって大丈夫。先頭には雪よけもついてる。どーだ、すげーだろー!」
「それがとーした。どーせドデンと置物になってるだけだろ。オレなんか町内の土地ぃ買い占めて、レール引いたぞ」
「なにをを?」
「町内のもんがこりゃあいい名物だってんでそれぞれ自分の土地ぃオレに安く分けてくれてな。そんかわり『村おこし号』って名前になっちまったけどモ。のべつぐるぐる町ん中ぁ走ってるもんで、市役所から住所不定だって文句がきたが、村おこしの一言で黙ンまりよ。こんだぁ、線路の脇に山と谷ぃこさえて実寸大ジオラマ作るんだ」
「ちちちち、ちくしょー、覚えてやがれ!」

 てぇんでまたしてもしてやられた熊公。
「う〜ん、ちくしょー、なんとかトメ公のやつをギャフンといわしてやりてぇなぁ。なんかねぇかな。おおっと、そうだ! あったぞあったぞ! 新幹線より、レール引くよりすごい奴が!」

 どうもいけません。こうなってくると、もうお互い意地の張り合いでございます。トメ公はトメ公で、レールのまわりに穴ぁ掘って水を溜め、掘った土は文字通り山にしてジオラマ作りに一生懸命。山には木を植えて、池には鯉を放し、町はできあいの奴がありますからそれで行くとして、畑と田圃をあつらえようとしておりますところへやってきたのが熊公。

「どんな具合だ。ジオラマ作りは」
「まぁ見てくんな。ここまでくれば八分通り出来上がりよ。なんてったって山が自慢よ。春には新緑、秋には紅葉が見られるぜ。夏には池に夕日が映ってそりゃあキレイなものよ。どうでぇ、大したもんだろう」
「ふふふん」
「お、こいつ、鼻で笑やぁがったな。じゃあおめえはどうなんでぇ。なんかスケールのでっかいもんはできたのかよ」
「今見てるよ、おめぇも」
「なにおぅ? どこになにがあるってんだ」
「地下だよ地下。地上をいじくり回すなんざぁちいせぇちいせぇ。こちとらもう億なんて金じゃねぇんだぜ。兆よ兆。」
「なにぃ。いってぇなにやったんでぇ」
「地下鉄だよ、地下鉄。なにしろ穴掘りには金がかかるからな。このあたりの下も通ってるぜ。ガス管と通信ケーブルを何本か切ったけど」
「なにいぃぃぃぃ!」

 乱暴な話もあったもんでございます。それにしても、乗り物に凝った方はたいていご自分でお乗りになるのに、電車だけはそうもいかないようですな。それにしても元気のいいお話でしたな。

 電車だけにでんきがいい。おあとがよろしいようで……ああ! ものを投げないでくださいぃぃぃ
 


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