ビールの友020
僕がこの季節を嫌いな理由
1997.04.02
いよいよ来ました。この季節が。ゲロの季節と地元では呼ばれています。ホントは花見の季節です。井の頭公園には桜が多く、とんでもない人数の人が集まってきます。夜、公園におりていくと、公園全体が「うお〜ん」といううなりをあげているような感じがします。人の怒鳴り声や歌声が集合体になるとこうなるんですね。いやー、すさまじいです。
今年はわりと暖かいのでさらに騒ぎやすいみたい。公園には池があって、行き来には橋を渡ります。この季節、この橋を渡るのがすんごい難関。橋中が人で埋まり、なかなか前に進めない。なにしろアッチこっちでカメラを構え、ピースやらチーズやらをやっている上、景色のいいところでは立ち止まって欄干を占拠しようと騒いでいるし、酔っぱらいはわめくし、先に進めないからここでカラオケ始めちゃおうなんて奴もいて、もうグチャグチャでんがな。
朝になると、公園から駅までの電柱という電柱が(ちょっとオーバー)ゲロ吐き場と化していて、そこらの路地にも吐きまくってる奴がいる。そのゲロをみて、朝からもらいゲロしてる奴もいる(これは本当)。公園の中はゴミだらけになっていてビニール袋が風に舞い、桜がなかったらごみすて場と変わらないという有り様。
何よりこの季節、暗い記憶がよみがえるのでした。
まだ学生の頃、近所の友人たちとこの群れに混ざって花見をやったと思ってくんねぇ。そもそもこれが間違いの元。なにしろ地元では「悪い子にしてると花見に連れていくぞ!」というとどんな悪童もピタリと悪さを止めたというくらいのものであります。それなのに、ああそれなのに、何を好き好んで花見なんかやっちゃったんだろう。後悔先に立たずとはよく言ったものです。
飲んでしばらくした辺りですっぱりと記憶がとぎれているんですね、この時の。目が覚めたら自分のアパートで、髪の毛がゲロにまみれて寝ておりました。いったい何があったんだろうと考えるけど、記憶がまったくない。ともかくむかつく胸に苦しみながら、まずは髪の毛と身体を洗い、ぐるぐる回る視界と格闘しながら服を着替えていると、身体が痛い。よくみるとあちこちに傷があり、お尻と背中の中間当たりには擦り傷がある。
ゆうべいったい何があったんだろう?
このよーな疑問を僕が抱いたとしても、誰も責めることはできないでしょう。ま、じらすのは止めて、後日友人から聞いた僕の醜態を書きましょう。
飲みはじめてしばらくすると、僕が友人の一人の頭にコップ酒を浴びせかけ、それに怒った当の友人が、僕に酒を飲ませて頭を両手に挟んでぐるぐると振り回し、あっという間にへべれけ状態になったそうである。つまり僕が悪いわけだ。しかし、頭にコップ酒の時点ですでに僕の記憶はない。日本酒を冷やでガンガンやったからなぁ。
で、つぶれてしまった僕をアパートまで運ぶために、友人一同が両手両足を持って橋を渡ったそうである。ところが、身体がぐったりしているのでお尻が地面について引きずられ(これで擦り傷ができたわけだ)、だんだんジーパンが下がり、ついでにパンツも下がり、橋の真ん中に来たときにはすっかりむき出し。お尻もアレも。橋の上にいた花見客に興味深く局部をながめられ、女の子にキャーキャー悲鳴を上げられながら、僕はアパートにご帰還したのであった。
本当の記憶はまったくないんだけど、この季節になると、橋の上をチンチン丸出しで引きずられていく僕の姿がフラッシュバックのように脳裏に浮かんでくる。
そんなわけで公園でギャーギャーわめいている連中を、僕はあんまり責められないのでした。